【概要】
・国際的な共通認識
癌性痛治療における標準薬のひとつである。
・用法
経口。
海外では、皮下注(持続皮下注可)、筋注、静注、経鼻、舌下、頬粘膜、挿肛。
・生物学的利用率
経口:日本人では24%。海外の報告では13-62%といわれる。
皮下注:静注の78%。筋注:静注と同じ?
・鎮痛効果
モルヒネの5(4-8)倍。
経口速放剤の鎮痛効果は約4時間持続し、鎮咳作用についても同じ〈トワイクロス〉。
・肝障害患者
中等度の肝障害患者ではAUCが4倍になる。
・腎障害患者
中等度の腎障害患者ではAUCが2倍に、重度の腎障害患者ではAUCが4倍になる。
・高齢者
高齢者(65-74歳)と非高齢者(18-38歳)では、血中濃度推移に差がない。
・作用発現時間
経口速放剤:30分以内
皮下注、筋注:約15分
静注:5分以内
・最大効果発現時間
静注:20分以上
・Tmax
速放錠 単回, 反復:(0.5-)1時間
徐放錠 単回 3.3-5時間
・T1/2
投与後期になると延長する
速放錠 単回 1mg:5時間、2mg:9時間、4mg:18時間
反復 1.3mg:13時間
徐放錠 単回 2mg:9時間、6mg:17時間
静注 2.3時間
・効果持続時間
速放錠 4-6時間、徐放錠 24時間
・代謝
肝代謝(主にグルクロン酸抱合)
・排泄
腎排泄
【参考資料】
・添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/430573_8119003F1023_1_02.pdf
・添付文書 http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/430573_8119003G1029_1_02.pdf
・Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Hydromorphone
・Drugs.com https://www.drugs.com/pro/hydromorohone.html
・21世紀のオピオイド治療, 第2版, 2013(日本語版 2014)
・トワイクロス先生のがん緩和ケア処方薬, 2010(日本語版 2013)
【研究報告】
・癌性痛に対するレビュー〈Baoら, 2016, pubmed=27727452〉
HM、モルヒネ、オキシコドンを比較するための質の高いエビデンスはなかった。
3剤の効果と副作用は同様であったが、
HMは夜間継続的な痛み緩和をもたらし、痛みのために眠れない患者に対して考慮することができる。
・急性痛と慢性癌性痛のレビュー〈Quigleyら, 2002 → 2013更新, pubmed=11869661〉
HMと他の強オピオイドの臨床的な有意差は証明されなかった。
・急性痛、慢性癌性痛、術後痛などのメタアナリシス〈Feldenら, 2011, pubmed=21841049〉〈Hannaら, 2008, pubmed=18976472〉〈Wirzら, 2008, pubmed=18095008〉
HMがモルヒネ(M)より、鎮痛作用の点でわずかに(質の良い試験では明らかに)優れていることが示された。
鎮痛効果は、急性痛ではHM>M、慢性癌性痛ではHM≒Mであった。
嘔気と嘔吐は、急性痛ではHM≒M、慢性癌性痛ではHM<M(HMが好ましい)であった。
便秘は、2個の研究で相反する結果となった。
・癌性痛のレビュー〈Pigniら, 2011, pubmed=21708853〉
HMがモルヒネとオキシコドンの代替薬であることを支持するエビデンスはあったが、HMが第1選択オピオイドであることを証明するエビデンスはなかった。
・癌性痛のレビュー〈Caraceniら, 2011, pubmed=21708848〉
経口HM、モルヒネ、オキシコドンの効果と毒性は同様であった。
・慢性腰痛を有するオピオイド耐性患者を対象としたプラセボ対照試験〈Haleら, 2010, pubmed=20429852〉
HM徐放錠はプラセボと比較して有意に痛みを軽減させた。
・高齢者の慢性痛マネジメントにおける国際専門家パネルのコンセンサス〈厚生労働省〉〈Pergolizziら, 2008, pubmed=18503626〉
免疫力への影響がモルヒネ、フェンタニルよりも少なく、患者のQOL向上に、より貢献できる。
・オピオイドのせん妄リスクのレビュー〈Swartら, 2017, pubmed=28405945〉
質が高い研究はなく、質が中等度の研究が1個、質が低い研究が5個認められた。すべてが周術期(整形外科領域など)の研究であった。平均年齢は、60歳代の研究が3個、70歳代の研究が1個、80歳代の研究が2個であった。
痛みなどの重要なリスク因子は、しばしば考慮されていなかった。
HMとフェンタニルは、他のオピオイドよりもせん妄リスクが低いように思われた。
・米国の患者調査(約138万例)〈Gulurら, 2015, pubmed=26609431〉
2010年から2013年の3年間に、外科領域および内科領域でHMの使用が増えMの使用が減り、特に外科領域ではHMがMを追い抜いた。
HMはMと比べると、痛みのレスキューの使用は外科領域で0.63%、内科領域で0.25%増え、在院日数は外科領域で0.62日、内科領域で0.88日短縮し、30日以内の再入院は外科領域で1.37%、内科領域で3.41%増えた。
ハイドロモルフォン ヒドロモルフォン 2017.11 PDFファイル