薬剤性せん妄(その1)

《はじめに》

認知低下はせん妄発症と関連しますが、同一の事象ではありません。私は、「認知低下」→「閾値下せん妄状態」→「せん妄発症」と、段階的に考えています。

このまとめでは、「薬剤と認知低下の関連性」についての情報はできるだけ割愛し、主として「薬剤とせん妄発症の関連性」または「薬剤とせん妄リスクの関連性」についての情報を記載しました。

また、薬剤性せん妄に関するデータの多くは、周術期せん妄の研究から得られたものであるといわれますが Vasilevskisら, 2012, PMID: 23040281、このまとめでは、周術期せん妄だけが対象の文献は割愛しました。

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ヒドロモルフォン ハイドロモルフォン Hydromorphone HM ~ 他のオピオイドとの比較を中心に ~ 2017.11

 【概要】

国際的な共通認識

癌性痛治療における標準薬のひとつである。

用法

経口。

海外では、皮下注(持続皮下注可)、筋注、静注、経鼻、舌下、頬粘膜、挿肛。

生物学的利用率

経口:日本人では24%。海外の報告では13-62%といわれる。

皮下注:静注の78%。筋注:静注と同じ?

鎮痛効果

モルヒネの5(4-8)倍。

経口速放剤の鎮痛効果は約4時間持続し、鎮咳作用についても同じ〈トワイクロス〉。 “ヒドロモルフォン ハイドロモルフォン Hydromorphone HM ~ 他のオピオイドとの比較を中心に ~ 2017.11” の続きを読む

オピオイドによる便秘(Opioid-Induced Constipation (OIC)) 2016

☆ オピオイドの用量と便秘との関連は?

・欧州11か国の1568例の癌患者の多変量解析では、OICは、Karnofsky Performance Statusが80%以下であること、ベッドか椅子で過ごす時間が多いこと、遠隔転移があること、膨張性下剤と大腸刺激性下剤を併用していること、入院していること、遺伝子の一塩基多型があること(TPH1、OPRM1、ABCB1、CHRM3、COMT)と関連があった。オピオイドの用量とは関連がなかった。[Laugsandら, 2015, pubmed/26087058]

・米国の146例の非癌性慢性疼痛患者の多変量解析では、OICは、オピオイドの使用期間が長いことが最大の要因であった。オピオイドが高用量であることは要因ではなかった。[Tutejaら, 2010, pubmed/20100280]

・英国の274例の癌患者の解析(詳細不明)では、下剤への反応はモルヒネの用量と関連がなかった。[Droneyら, 2008, pubmed/18197439] “オピオイドによる便秘(Opioid-Induced Constipation (OIC)) 2016” の続きを読む